低強度と高強度の一致点と相違点~主に血流能力において~




以前、強度を上げるか、ボリュームを増やすか論争というタイトルでブログをポストしました。今回はそれの続編のような形です。

 

最初に確認しておきたいのは、生理的な意味での持久力とはエネルギーの産生能力を指します。エネルギーの産生能力とは体内に貯蔵されているエネルギー源を燃やしてエネルギーを得ることを意味します。その為には酸素が必要です。

 

従って、酸素をどれだけ取り込めるかというのが持久的能力を測る一つの指標になります。それを酸素摂取量と言い、これは心臓でどれだけの血液を送り出せるか(心拍出量)。そして、骨格筋でどれだけ酸素を抜き取れるか(動静脈酸素較差)で決まります。

 

骨格筋で酸素を抜き取るには筋へ効率良く血液を送り込む血流能力の高さが重要です。その為には毛細血管の増加や配置を適正化する必要があります。

 

恐らく、一般的にはLSDに代表されるような持久的なトレーニングが毛細血管やミトコンドリアの増加に寄与すると考えられていると思われます。今回のブログはここの所が実際どうなっているのか。低強度と高強度でどういった点において一致しており、どういった点で異なっているのかについて述べてみたいと思います。

 

Scribbansが下記のような研究を報告しております。

 

概要

・男性被験者16名、及び女性被験者3名の合計19名の非鍛錬者が対象。

・週に4日、6週間のトレーニング介入。

・LV-HIT(low-volume high-intensity interval training)グループと、END(moderate-intensity continuous cycle exercise)グループとで分けた。

・LV-HITとは20秒170%VO2peakを10秒のレストで8回の合計4分間。ENDとは30分65%VO2peakでの自転車運動を指す。

 

結果

・LV-HIT、ENDどちらにおいてもVO2peak及び有酸素運動のパフォーマンスが向上した。

 

・またLV-HIT、ENDどちらにおいても毛細血管密度の増加が認められた。

 

・LV-HIT、ENDどちらにおいても無酸素運動のパフォーマンスが向上した。しかし、増加率に関してはLV-HITの方が高く、骨格筋の解糖能に関してはLV-HITのみ向上が見られた。

上記の研究から低強度であろうと高強度であろうと毛細血管密度の増加が起こると報告されております。そして、毛細血管密度や持久的な能力の向上が起こるけれども、全く同じ訳でも無いと示唆されております。

 

特に、骨格筋の解糖能という大きなエネルギーを供給する能力に関しては、高強度においてのみ向上が見られました

 

これらの適応が起きた点に関連した興味深いレヴュー論文をLaughlinが発表しております。それによると、骨格筋の血流能力(血管新生や血管のリモデリング)はトレーニングによって向上する。しかし、血管適応の変化の分布は強度によって異なるとのことです。

 

つまり、高強度(文中だとinterval sprint trainingと表現)だと速筋繊維において。低強度だと遅筋繊維において酸化能力、毛細血管密度といった筋の血流能力の向上が見られると報告しております。

 

これらの変化は、運動時に動員される筋線維が強度によって異なるからではないかと考えられます。遅筋繊維を主に動員する持久的なトレーニングでは遅筋繊維において適応が起こり、速筋繊維も動員することになる高強度のトレーニングでは速筋繊維において適応が起こり易いのだろうと思われます。

 

まとめ

・低強度であっても高強度であっても血管新生や血管のリモデリングといった血流能力の向上、持久的な能力の向上は起こる。

・ただし、強度によって適応が起こる線維が異なるし、生じた適応も異なると考えられる。

  

それまで低強度メインでトレーニングを行っていた方が高強度を取り入れたり、高強度一辺倒だった方が長い時間の持久的トレーニングを行うようになると飛躍的に成長することがあります。これらは今まで手付かずだった部分を鍛えた結果ではないかと考えております。

   

以上述べて来たように、能力を十全に開発したいのであれば低強度から高強度までバランス良く行う方が良いでしょう。

  

ここからは個人的な経験談ですが、週に8~10時間以上トレーニングを行える方は満遍なくやる。(平日に1回1時間を3~4回。休みの日に1回は長い時間のトレーニングを行うと想定)

 

週に3~5時間程度の方は時間効率の良い高強度メインでトレーニングを組み立てると良いのではないかと思います。(1回1時間を3~5回程度を想定)

 

なお高強度のメニューをどう組むかという具体的な内容に関しては、伊藤コーチが参考になるブログをまとめていらっしゃるのでそちらをご覧になるのをお勧めいたします。

 

パフォーマンスを”上げる”インターバルと”下げる”インターバルの違い Part.1

 

編集後記

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参考文献

Scribbans TD

Fibre-specific responses to endurance and low volume high intensity
interval training: striking similarities in acute and chronic adaptation.

PLoS One.2014 Jun 5;9(6):e98119. doi: 10.1371

 

Laughlin MH

Mechanisms for exercise training-induced increases in skeletal muscle blood flow capacity: differences with interval sprint training versus aerobic endurance training.

J Physiol Pharmacol.2008 Dec;59 Suppl 7:71-88.