一口に柔軟性と言っても色々あります。




日本のスポーツ界における筋トレに対する無理解はいい加減諦めもつきましたが、かと言って黙っているとますます出鱈目が広まるので反論しておかないとなと思ってこのブログをまとめております。

まずはこちらをご覧ください。
安易な筋肉増量は危険 自分の体、自分で理解せよ
オリックスの2軍 田口監督の記事です。

「自分の体を自分自身でよく理解して、何が必要なのかを考えて鍛えてほしい」このコメントには全面的に同意できます。しかし、筋トレをすると柔軟性が損なわれるという迷信について科学的知見を基に述べてみたいと思います。

 

そもそも柔軟性って何?

 

一口に柔軟性と言っても実は静的柔軟性と動的柔軟性の二種類あります。

静的柔軟性・・・関節、その周囲の筋の受動的動作で可能な動作の範囲。随意の筋活動を必要としない。
(例)背中を押してもらって体が前に倒れる限界

動的柔軟性・・・能動的動作中の関節可動域を指す。随意の筋活動を必要とする。
(例)走っている最中にどこまで股関節が開くか

 

柔軟性というと一般的には前者の静的柔軟性を指すと思われますが、競技において重要な意味を持つのは後者の動的柔軟性です。従って、ストレッチなどで関節可動域のみを向上させても競技においては十分と言えません。

それぞれの競技や運動には必要とされる関節可動域があり、それぞれの活動に最適なレベルの柔軟性があります。選手の柔軟性が最適な範囲から外れていると障害のリスクが高まりますし、競技パフォーマンスの低下も考えられます。

ただし、その柔軟性とは単なる関節可動域の問題では無く、筋肉にテンションを掛けながらコントロールできる動的柔軟性こそが必要であると理解しなければなりません。

 

筋トレをすると柔軟性を損なうの?

 

基本的にはNO。しかし、部分的にはYESです。
まず、筋トレを行う事で筋量が増えたり筋力が増せば筋のスティフネスが向上します。スティフネスが向上すれば曲げるのにより大きな力を必要とします。その意味では硬くなると言えます。しかし、曲げるのにより大きな力が必要になるのと、曲がらないは全く異なる次元の話です。

下記の写真をご覧ください。

被験者が非鍛錬者なので鍛錬者にそのまま当て嵌めらることは出来ないと思いますが、柔軟性の向上はRTとSSでほとんど差がありません。両群ともコントロール群に対して有意に向上しております。

そして、膝関節伸展筋群のピークトルクに関してはRTが最も高い数値を出しております。それに対して、膝関節屈曲筋群は有意差ありませんでした。ピークトルクの向上と柔軟性の向上両方に寄与するとは言えませんが、少なくとも筋トレによって柔軟性が損なわれることは無いと言えそうです。

他にもエキセントリックなトレーニングがパフォーマンスや障害予防効果だけではなく、柔軟性を向上させるという研究もあります。もし、硬くなったと感じる方がいらっしゃるならば、それは狭い関節可動域でトレーニングを実施した結果です。やり方の問題であり、筋トレの問題ではありません。

むしろ、適切なフォームで関節可動域を命一杯使用して行う筋トレこそ動的柔軟性を安全に向上させる有効な方法と言えます。勿論、競技自体で関節可動域を命一杯使えれば良いですが、競技においてはどうしても不意の動きが存在します。その際の障害リスクを考慮すれば限界を求めるのは危険と言えます。

 

まとめ

凄い筋肉量のお相撲さんの体が柔らかいとか、ムキムキの体操選手が機敏かつ柔軟であるとか、100m走の選手がめちゃくちゃマッチョなのを見れば一目瞭然だと思うのですが変な迷信がはびこっています。

勝利を目指しているアスリートは、筋トレをすると身体が硬くなるとかキレが無くなるという思い込みを脱して、きちんと学びトレーニングの効果を享受していただきたいものです。

 

参考文献

MORTON SK

RESISTANCE TRAINING VS. STATIC STRETCHING: EFFECTS ON FLEXIBILITY AND STRENGTH

J Strength Cond Res,2011;25(12):3391-8

 

O’Sullivan K

The effects of eccentric training on lower limb flexibility: a systematic review.

Br J Sports Med. 2012 Sep;46(12):838-45.