バランスボールやバランスディスクを使った不安定な接地面でのトレーニングって実際のところどうなの?




今までポストした中で最も長いタイトルです。もっと短くて的確なタイトルを付けられるセンスがあれば良かったのですが・・・

さて、バランスボールやバランスディスクを利用して敢えて不安定な接地面でエクササイズを行うのは洋の東西を問わず人気があります。従来通りの安定した接地面で行うよりも、不安定な状態で行った方が難易度が上がり体幹やバランスを鍛えられるという謳い文句です。

エスカレートすると下記の動画のようにバランスボールの上でスクワットを行ったりします。

こういったエクササイズが、実際のところどういった効果を期待できるのか科学的知見を基に考えてみたいと思います。

 

競技力・筋力アップについて

まず、不安定な接地面でのトレーニングはリハビリの世界ではよく用いられ、膝関節等に既往歴のある患者の固有受容感覚の改善。前十字靭帯損傷の予防には有効のようです。それでは健常者に対してはどうでしょうか。

バランスディスク上でスクワットを行うと一部の筋肉(腹直筋等)の筋活動が増加する事が研究によって証明されております。不安定な状態で姿勢を保つために主動筋と拮抗筋が常に緊張を強いられるからと考えられます。このように胴体部分の活性化と安定化を得られるというのが、不安定な接地面でエクササイズを行う根拠となっているのではないかと思われます。

確かに研究によると胴体部分の安定化には寄与するようです。
Stantonによると週に2回のバランスボール上でのトレーニングを6週間行ったところ、胴体部分の安定性向上を示す研究を報告しております。しかしながら、腹部及び背部の筋活動・VO2max・ランニングエコノミー・走行中の姿勢に有意差は無かったそうです。

胴体部分の安定性が向上したのだから良いと捉えるかで評価が分かれると思いますが、結局のところ競技力の向上に繋がっていないのは重要な視点だと思われます。

また、胴体部分の安定性に寄与したとしても、安定した接地面でより高重量を扱ったスクワットやプランクといった他のエクササイズよりも有効かというと疑問が残ります。

他には、不安定な接地面でのエクササイズが対象とする筋肉への刺激を大幅に減少させる事も証明されております。

Andersonによるとバランスボールの上でチェストプレスを行った場合、安定した接地面上で行ったのに比べて59.6%も筋の発揮能力が下がりました。従って、安定した接地面でのトレーニングと組み合わせないと、不安定な接地面でのトレーニングだけでは必要となる過負荷を与える事は困難であると言わざるを得ません。

 

バランスを鍛えられるのか?

次に、不安定な接地面上でのエクササイズがバランスを鍛えるのか考えてみたいと思います。バランスボールやバランスディスクを用いたエクササイズを行うとその動作自体は上手く出来るようになります。ただし、これはその動作特有の向上であり他に転用できるものではなさそうです。

Giboinが次のような研究を行っております。
40人の被験者を2つの介入群とコントロール群の3つに分けた。介入群にはトレーニングの器具だけを変え同じエクササイズを2週間にわたって6回のトレーニングを課した。各グループとも自分が行ったエクササイズに対しては有意に向上したが、異なる器具を使用した同じエクササイズに対しては余り向上が見られなかった。

向上自体はしているのですが、コントロール群とほとんど変わらずテストへの慣れもしくは運動をするという行為自体によって向上しただけと考えられそうです。

どうも、いわゆるバランスを取るというものは固有のスキルであり、使用している道具を含めて非常に似通っていても他のモノに転移する事は無いと考えられそうです。従って、バランスボールの上に乗ってスクワットが出来るようになっても、自転車のコントロールが向上する可能性はほとんど期待できないと言えそうです。

 

まとめ

バランスボールやバランスディスクを用いた不安定な接地面でのエクササイズは、理学療法士やアスレティックトレーナーの方が怪我した選手のリハビリに行うのであれば有効な手段かもしれません。

しかし、アスリートが競技力の向上を目的とするならばやる価値があるのかはなはだ疑問です。少なくともバランスや身体コントロールが向上する可能性はほとんど期待できず、且つ競技力の向上には負荷が足りない可能性の高いモノと言えます。

単純にバランスボールの上に乗りたいとか気分転換のアクティビティとして実施したいというのであれば、転倒によるリスクを考慮したうえで取り入れるのもありかもしれません。楽しむという行為に対してどうこう言うつもりはありませんが、アスリートの限られた時間を何に割くかはよく考えた方が良いでしょう。

 

編集後記

パワートレーニングバイブルの著者でPeaks Coaching Groupの創立者ハンター・アレン氏が11月8~12日来日されます。
ネット上の講義は聞いた事がありますが、直に会うのは初めてで私も非常に楽しみです。日頃トレーニングについて疑問を感じている事があれば直接聞く貴重な機会だと思います。東京セミナーではお手伝いとして私も参加しますので宜しければご参加ください。

下記URLからチケットを購入可能です。現在(10月31日)だと割引コードも利用可能ですので是非お越しください。

http://www.peakscoachinggroup.jp/blog/20171006060139.html

 

参考文献

Caraffa A

Prevention of anterior cruciate ligament injuries in soccer. A prospective controlled study of proprioceptive training.

Knee Surg Sports Traumatol Anthrosc.  1996;4(1):19-21.

 

Anderson KG

Trunk muscle activity increases with unstable squat movements.

Can J Appl Physiol. 2005 Feb;30(1):33-45.

 

Anderson KG

Maintenance of EMG activity and loss of force output with instability.

J Strength Cond Res.2004 Aug;18(3):637-40.

 

Stanton R

The effect of short-term Swiss ball training on core stability and running economy.

J Strength Cond Res.2004 Aug;18(3):522-8.

 

Giboin LS

Task-specificity of balance training.

Hum Mov Sci. 2015 Dec;44:22-31.